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欲しいのは生血だけ ~原作物のシナリオ化秘話 複眼の映像より~

昨日のブログで、トラン・アン・ユン監督がノルウェイの森を脚本化するにあたり、そのポイントを
「原作のストーリーをなぞるのではなく、自分が本を読んだ時の感動、感覚を観客に伝えたいから」と言っていると書きました。

脚本は映画の設計書と言われていますが、脚本(以下シナリオと書きます)には、脚本家がオリジナルで創作するものと、原作があって、それを映像化するために書かれるものとがあります。

ノルウェイの森は後者に属するわけですが、映画監督や脚本家は、原作をどのようにシナリオにしてゆくのか、私は非常に興味があります。
私だったらどうすると?考えながら小説を読むのが好きです。
例えば、浅田次郎の渾身の大河小説「蒼穹の昴」なんかを読んでいると、どうしてこれを映像化するんだろう?このスケールの大きさをどう表現するんだろうと思っていましたが、NHKがちゃんとドラマ化してるので、さすがだなと感心しています。

ところで今、文集文庫の「複眼の映像」橋本 忍著を読んでいますが、この本に原作をシナリオにする秘話が書かれています。

fukugan

橋本さんは、自分のオリジナルシナリオを伊丹万作氏(故伊丹十三監督の父)にシナリオの指導を受けていた時、伊丹氏から「橋本君、君はオリジナルばかりだが......原作物には興味がないのかね?」と尋ねれ橋本さんは、面白いものがあればやりたいと答えます。

そうすると伊丹万作氏は更に「原作物に手をつける場合には、どんな心構えが必要と思うかね」と橋本さんに聞きます。

橋本さんは、こう答えます。
「牛が一頭いるんです。」
「牛........?」
「柵のしてある牧場みたいな所の中だから、逃げ出せないんです」
伊丹万作氏は、妙な顔をして橋本さんを見ています。
「私はこれを毎日見に行く。雨の日も風の日も......あちこちと場所を変え、牛を見るんです。それで急所が分かると、柵を開けて中へ入り、鈍器のようなもので一撃で殺してしまうんです」

「..........]
「もし、殺し損ねると牛が暴れだして手がつけられなくなる。一撃で殺さないといけないんです。そして鋭利な刃物で頸動脈を切り、流れ出す血をバケツに受け、それを持って帰り、仕事をするんです。原作の形はどうでもいい。欲しいのは生血だけなんです。」

しばらくして伊丹万作氏は
「君の言う通りかも.......いや、そうした思い切った方法が手っとり早いし、成功率も意外に高いかもしれない、ライターが原作物に手をつける場合にはね.......しかし、橋本君」
「この世には殺したりせず、一緒に心中しなければいけない原作もあるんだよ」
(以上 文春文庫『複眼の映像』橋本 忍著)より引用

橋本さんは、たくさんの原作物をシナリオにして来られましたが、花と竜、白い巨塔、砂の器、ゼロの焦点、霧の旗等
いずれも、橋本さんの考え方が伝わるような作品ばかりです。

『複眼の映像』は、この後、橋本さんと黒澤 明監督との出会い、黒澤監督との初めての仕事である「羅生門」を執筆された時のエピソードが実に興味深く書かれていますが、今日はここまでにして、映画「羅生門」のシナリオに関しては明日に書くことにします。
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